新撰組異聞―鼻血ラプソディ
斎藤と原田が向かい合う。

「そこまで」

土方の肩越しに声が響いた。

振り返り、近藤と井上の姿を見て土方は唖然とする。


「一子、もう充分でしょう」

斎藤の刀の先は、ぴくりとも動かない。


「芹沢さんは、覚悟を決めています。君たちがここで命を落としては、犬死にです。
……その刀、御公儀のために」

白刃が閃き刹那、斎藤の刀は鞘に収められていた。


「歳さん、行く末は託します」

土方は静かな近藤の声に頷き、夜の町を駆ける。

僅かな会話の隙に、帰り道で襲撃する計画は崩された。

土方は今夜を逃してはならないと決めている。
八木邸の主、源之丞は寄り合いに出て不在と聞いている。


「芹沢だけを狙え」

土方は命じる。

庭に回り、音を立てずに襖を開ける。

黒い影が4人、芹沢の部屋へ踏み込む。

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