新撰組異聞―鼻血ラプソディ
酒の匂いが、部屋中に立ち込めている。

どこぞの優男が眠っているのが見えた。

真っ暗な部屋を見回し、土方は芹沢の姿を探す。

稲光が白く瞬き、部屋をくまなく照らす。

芹沢は部屋の隅に、抜き身の刀を抱え込み、鋭い眼差しを向けて座っていた。


「随分、待たせておくれだね」

雷光が部屋を照らす。

ゆらりと立ち上がる芹沢の顔に、土方はゾクリ体が冷えるような恐怖を感じた。


「土方、山南、そっちは原田か。もう1人は……誰だい!?」

4人は一斉に刀を抜いた。


「なめられたものだね。たった4人かい」

芹沢が蒲団を激しく蹴る。
目を覚ました優男の思い切りの叫び声を、雷鳴が掻き消す。

雷光に照らされた翡翠の姿を、芹沢の目が捉える。


「……柳生の坊やかい!?」

芹沢が翡翠に斬りかかる。

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