新撰組異聞―鼻血ラプソディ
武田はハッとし、ぐいっと首を捻り、山南を見ると急ぎ正面を向き、竹刀を下げ姿勢を正す。


「これはどうも、山南総長」


「甲州流軍学にお詳しいそうですね、期待していますよ」

山南は穏やかな笑みを浮かべる。

武田は、ははーっと声が聞こえそうなくらい深く礼をし、首をぶるんと回し、手を添えて、おかっぱ髪を掻き上げる。


――おおーっ、金八先生そっくりやん


翡翠は山南の後ろから、武田の所作を見て、震えながら思う。


武田は山南より背の高い翡翠の顔を、山南の後ろに確認し、瓶底眼鏡を手の甲で上げ、じっと見る。


「あーーーっ!!」


翡翠は、ヤバいと感じ「山南さん、先に準備行かしてもらいます」言いながら脱兎の如く走り出した。


「信太さん」


山南は翡翠の後ろ姿に、声を飛ばしたものの、後は追わない。


「山南総長、あの失礼な短髪は隊士ですか?」



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