新撰組異聞―鼻血ラプソディ
声の調子、眉間に皺を寄せた顔、明らかに憤慨しているのがわかる。


「ええ、まあ……極度の人見知りをする子で私たちと未だ、まともに顔を合わせて話すこともできないんですよ。武田さん、気を悪くされましたね。すみません」


柔らかな物腰で、山南が宥めるように言う。


「あれほどの器量良しでですか?勿体ない」

武田は舌舐めずりをし、翡翠の走り去った方角を見る。

山南は背筋に波立つ寒気を感じ、翡翠の身を案じる。


「武田さん、あの子はかなり敏感で接するのが難しい性質ですから、私が近藤局長直々に預かり、沖田さんの組にいるんですよ」


嘘も方便とはまさにこの事だ。
沖田や原田が言えば、疑わしい言葉も、山南の醸し出す穏やかで知的な雰囲気で言えば真しやかになる。


「というと、あの隊士は1番隊に!?」

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