新撰組異聞―鼻血ラプソディ
山南は、ふと武田の顔を思い浮かべ「信太さん、私が行きます」と翡翠を呼び止める。


「えっ(((・・;)!?」


「お世話になっているお屋敷です。粗相があってはいけませんから」


翡翠にはグサリ、突き刺さる言葉だが、山南が言うと穏やかになる。


「すんません」

翡翠は小声で言い深々と頭を下げ、山南の後に続く。

道場を出ると、斎藤が翡翠に「明日からの準備は済んだか?」と、声をかけた。


「……はい。今、進めています」


翡翠は目を合わさずこたえる。


「段取りは聞かれましたか」


山南の問いに、斎藤は表情を変えず「はい、原田さんから概要は伺いました」


山南は納得したように頷き、「梯子がどこにあるか知りませんか?」と訊ねる。


「梯子は……先日、門柱の看板を掲げた時に、永倉さんと原田さんが仕舞われたはずですよ」


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