新撰組異聞―鼻血ラプソディ
山南は思ったが、口に出しても説明に困ることを予測し、何も言わない。

武田は瓶底眼鏡を人差し指で上げ、ボソッと呟く。


「あん人はどうも一筋縄ではいかんね~。でも、うちは諦めんよ」


山南は、背筋に冷たいものを感じ足を速める。


――信太さん、どうやら貴方は武田さんに火をつけてしまったようです……

山南は苦い顔をし、使用人勝手口へ向かう。

勝手口では翡翠が一足早く着き、山南を待っている。

金八もとい武田に、他の隊士とは微妙に違うオーラを感じ怯え、手拭いで垂れた鼻血を拭いながら……。


「翡翠さんでしたっけ?何かご用ですか?」


襷を肩に回し結わえた若い女性が、お勝手口から顔を出す。


――ゲッΣ(¯□¯;)


翡翠は急な声に大きく肩を跳ね上がらせ、ヒッと声を上げる。


「え……!?」


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