新撰組異聞―鼻血ラプソディ
若い女中は、翡翠が顔面蒼白になり、顔をひきつらせているのに気づき「ご気分でも悪いの?」と訊ね、背伸びし額に手を伸ばす。


「あ゛ーーっ」

翡翠は上擦った声を吐き後退りながら、再び鼻血の垂れ始めた鼻を手拭いで押さえる。


「あら!? 鼻血が」


「※%#&*§×¥※」


言葉にならない声を喉の奥底から頼りなく出し、震える翡翠。


「一足、遅かったようですね」


山南が暢気で穏やかな物言いをしながら、ゆっくりとお勝手口に現れる。


翡翠は乱れる息を整えながら、山南の後ろに身を隠し、口をパクパクさせる。


「あの……大丈夫ですか」

山南は後ろに隠れる翡翠を一瞥し、「どうぞお構いなく」と微笑み単刀直入、本題を切り出す。


「すみませんが、納戸の梯子が見当たらないのですが、ご存知ありませんか?」

若い女中は、はてと動きを止め暫く考える。


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