新撰組異聞―鼻血ラプソディ
「それでしたら、数日前に永倉さんたちが梯子を使われて……元の場所にもどしておいてくださいとお願いしましたけど」
女中はおずおずした様子で俯き、小さな声で話す。
「そうですか、ありがとうございます。後片付けはきちんとするよう、きつく叱っておきますね」
「あ……いえ、わたしが話したって……い、言わないでくださいね」
女中は今にも泣き出しそうな顔を向け、山南を見上げる。
「ええ、承知しました」
山南は優しい声音でこたえ、一礼したが、その目に優しさは微塵も感じられない。
「信太さん、行きますよ」
「……はい」
翡翠は手拭いを鼻に当てたまま、頼りなくこたえて、小さくお辞儀をし、すたすたと早足で歩く山南についていく。
女中が、くすり「へんな人」と呟いたのを翡翠は聞き逃さなかった。
女中はおずおずした様子で俯き、小さな声で話す。
「そうですか、ありがとうございます。後片付けはきちんとするよう、きつく叱っておきますね」
「あ……いえ、わたしが話したって……い、言わないでくださいね」
女中は今にも泣き出しそうな顔を向け、山南を見上げる。
「ええ、承知しました」
山南は優しい声音でこたえ、一礼したが、その目に優しさは微塵も感じられない。
「信太さん、行きますよ」
「……はい」
翡翠は手拭いを鼻に当てたまま、頼りなくこたえて、小さくお辞儀をし、すたすたと早足で歩く山南についていく。
女中が、くすり「へんな人」と呟いたのを翡翠は聞き逃さなかった。