新撰組異聞―鼻血ラプソディ
翡翠はがくり肩を落とし、「……へんな人やって」ぶつぶつとぼやく。


山南は、翡翠の大きな溜め息を聞き、振り返り「難のない人間なんて居ませんよ」と優しい笑顔を向ける。


「信太さん、君は高い所大丈夫ですか?」


「はい、とくに問題は」


「それは良かった」


「山南さんは高い所、苦手なん?」


「ん……可もなく不可もなくといった所です」


山南と翡翠が話しながら歩いていると、梯子を担いだ原田の姿が見えた。


「どうやら、見つかったようですね」


山南が落ち着き払い、見つかるのが当然の如く言う。


――この人は……感情をあまり表に出さないな


翡翠は無表情の笑顔の内に秘めた、山南なりの決意の深さや覚悟を感じて、胸が詰まる。


――この人の、山南さんの笑顔がみたい。
真から笑う顔がみたい



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