新撰組異聞―鼻血ラプソディ
翡翠は山南の後ろに続き、道場へ戻る。

原田、斉藤達と梯子を設置し、再度お手玉作戦の段取りを確認する。


「翡翠、本当に7日間で成果がでるの?」


眼光鋭く原田に念を押され、翡翠は「も、もちろんです」と吃りながらこたえる。


「楽しみですね」

山南が穏やかに言いながら、「頼みましたよ」と言うように翡翠を見つめ頷いた。



翡翠は、その夜。
興奮と不安と緊張で、眠れぬ夜を過ごす。


――元の世界で、剣道部主将としてやってきたことを、ただ実践するだけだろう


何度も自分自身に言い聞かせる。


山南は文机で、明け方まで蝋燭の明かりで書物を読んでいた。

翡翠が時々、漏らす溜め息に「眠れませんか?」と声をかける。


「緊張して……」

山南は、すまなさそうにこたえた翡翠に、蝋燭の明かりを消し、側に寄る。



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