新撰組異聞―鼻血ラプソディ
「ちょっと、土方さん! 本気ですか?」



「やれるな、翡翠」



「はい、……条件は?」



「良い答えだわ。……総から1本、とりなさい」



部屋中の空気が、一瞬で凍てついた。


土方さんの声だけが、緊張した部屋に響く。



沖田さん……。
俺だって知っている。
沖田さんがどれほど、すごい剣士かを……。


俺の世界の歴史、記述にある沖田さん。
新撰組1番隊長、沖田総司と言えば京都中の浪士が震え上がるほどの剣豪だ。


違うのは女ってことだけで、たぶん実力は俺の知っている沖田総司に違いない。


――その人から1本。


無謀だと思う。

それでも、新撰組の副長「土方さん」が示した条件。

まだ……壬生浪士組みたいやけど……。

俺だって剣道をガキの頃からやってきた。


昨年はインターハイにだって出場して副将まで務めた。

惜しくも大将が敗れて優勝は逃したが……。

沖田さんの流派が何だろうと、関係ない。


< 30 / 164 >

この作品をシェア

pagetop