新撰組異聞―鼻血ラプソディ
たが山南さんから、近寄らないようにと言われた人がいる「芹沢鴨美」――。
穏やかな山南さんからは想像もつかない恐い形相で、「何故」と聞いてもこたえてくれなかった。
土方さんに職務質問された時。
「芹沢」と口に出した時の素早い反応と声の感じ……が、尋常ではなかったことを思い出した。
「翡翠、ちょっと……」
俺が井戸水を汲み、顔を洗おうとした時。
クールな声がした。
「昨日の総との死合い、何かタネがあるはずだ……」
「!?……斎藤さん」
――鋭いな
俺は桶に、入れかけた手を止める。
「翡翠、あんたは何もしなかった。ただ中段に構え、間合いを詰めただけだ……巧みに」
――斎藤さん!?
「上半身を揺らさず……摺り足? いや、普通の摺り足だと上半身が……」
俺は、斎藤さんの方を向かず、桶の水を見つめる。
穏やかな山南さんからは想像もつかない恐い形相で、「何故」と聞いてもこたえてくれなかった。
土方さんに職務質問された時。
「芹沢」と口に出した時の素早い反応と声の感じ……が、尋常ではなかったことを思い出した。
「翡翠、ちょっと……」
俺が井戸水を汲み、顔を洗おうとした時。
クールな声がした。
「昨日の総との死合い、何かタネがあるはずだ……」
「!?……斎藤さん」
――鋭いな
俺は桶に、入れかけた手を止める。
「翡翠、あんたは何もしなかった。ただ中段に構え、間合いを詰めただけだ……巧みに」
――斎藤さん!?
「上半身を揺らさず……摺り足? いや、普通の摺り足だと上半身が……」
俺は、斎藤さんの方を向かず、桶の水を見つめる。