新撰組異聞―鼻血ラプソディ
「まぐれ勝ちではないか――。
翡翠……あんたは、そこまで算段して」


「さあ――せっかく、歴史に名を残した剣豪と試合ができるなら、なんだって試してみたい。

真刀なら死んでるけど竹刀なら死なないし」


「そういう考え方、嫌いじゃない。――稽古が楽しくなりそうだ」


「俺も楽しみです」


振り向いて、面と向かい目を見ながら話せない自分が情けない。


俺は斎藤さんに、背中を向けたまま、ドキドキしている胸に、手を当てる。


「すんません……鼻血出そうやから、背中向けてて堪忍……」


「可笑しな奴」


斎藤さんがフッと溜め息をつき、呟くのが聞こえた。

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