新撰組異聞―鼻血ラプソディ

2話 トイレって、何て言うん?

「翡翠、総と見廻りに行きなさい。
で途中、書状を此方へ渡して来なさい」


俺は朝稽古の後、土方さんから部屋に来るよう呼び出された。


「それから、これは提案だけど……翡翠、稽古と見廻り以外は暫く目隠しで生活してみる気は?」


「……目隠し生活?」


土方さんと向かい合わせで話をする間、俺はずっと俯いて、震えを堪えている。


「怯える、震える、鼻血――。
見えている情報で症状が出るなら、目隠しすれば少しは症状が緩和するのではと思ってね。
先ず。気配を感じる、声をかけられる、触れられることに慣れれば、見えていても大丈夫になるのではないかと……」


震えに動悸も加わり、思わず目を閉じる。

僅かに、気が紛れる気がする。


「……た、たしかに見えなければ少しは楽です」


「ん、それに。目隠しをして過ごす時間が、君の剣の勘も鍛えるかと」



「どういう……?」

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