新撰組異聞―鼻血ラプソディ
1本取れたらでなく、1本取って、ここで生きることしか考えてなかった……?


稽古の間ずっと、わたしの動きや癖や技を打たれながら観察して、1本取る策を考えていた……?



1本取れるなら取ってみなさい――わたしには勝てるという傲り、慢心があった……。



絶対に勝つ、絶対に1本取る――という翡翠くんの思いに負けた……。



――死合いをしなさい



土方さんは、わたしの慢心に気付いていた……。



土方さんは……翡翠くんの剣気に気づいていた……?



わたしから1本取れる実力を持っていると……。



冷静になって考えると、恐くなった。


翡翠くんの実力と、翡翠くんの覚悟に背筋が冷たくなる。


だけど……。


あれでは、ここで生活はできない。


女所帯の屯所だ。
周りは、みんな女。
あーして、震え続けていては暮らせない。



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