新撰組異聞―鼻血ラプソディ
芹沢さんは言いながら、ゆっくりと腰に差した刀を抜き、切っ先を俺に向ける。



こいつ……マジで!? 刀を俺に。


震えてる場合やない、怯んだら斬られる……



「さっきの威勢はどうしたの?」



こんな極道みたいな女相手に……竹刀で交わす?



「刀を相手に竹刀で、あんた莫迦でしょ!?」



「どうかな!? 新陰流の剣を甘く見てへん?」



「柳生宗厳の……面白い」



酒をかなり飲んでるけど……正気や。

下手に攻めたら斬られる。
間合いを詰めてもアカン。
ピンチや。



「かかってこないの?」



「刀、相手にアホなことはでけへんやろ?」



土方さんから教わった言葉を思い出す。



――斬り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ、踏み込み行かば後は極楽



――刀を弾(はじ)き飛ばすには……どないしたら!?

飛び込み技と返し技……合い面で、あいつの刀を落とす?
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