新撰組異聞―鼻血ラプソディ
「翡翠を見なかった?」


隊士に訊ねるが、誰も知らないとこたえる。

斎藤が廊下を戻ってくると隊士たちは、まだ翡翠談義をしている。


「……それより、あたしは芹沢の翡翠を見るあの目が気になるわ。
あれは……獲物を捕らえた雌虎のような目だわ」


「佐之ちゃん、考え過ぎよ」


「芹沢はつい最近も、吉田屋の若旦那が芹沢を袖にしたのに腹を立て、芸妓2人を断髪した上、店で刀を振り回して暴れてるし。
翡翠は、芹沢に暴言吐いた上に芹沢を打ち負かしてるのよ……芹沢の反撃があるに違いないわ」



「確かに……吉田屋のような置き屋の青瓢箪より、翡翠の方が凛々しいわね」



「でしょう!?」



斎藤は不毛な会話に、冷たい視線を送る。


「反撃があったにしろ、翡翠が芹沢の誘いにのるわけがない。翡翠は女性恐怖症だ」


「一(いち)さん、マジ?」
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