欲しがり屋のサーチュイン
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「ばっっ……!だからぁ!うなぎさんもそー思うっしょぉっ!??」
目の前でベロンベロンに酔いながらひとつ後輩の橋元が絡んでくる。
千晶はそれをいつもと変わらない表情で適当にふんふんと相槌を打った。
ガチャガチャとうるさい大衆居酒屋で、後輩がどれだけ喚いても誰も気にしないのがありがたい。
橋元は1つ階の違う別チームで、もろもろと作業は違うものの、ほぼ同じような仕事をしている仲間でもある。
そんな橋元と会ったのはちょうどエレベーターが一段下の階に下がった所で。
『あ、うなぎさんお久しぶりっす。ん?もしかして今から飲みっすか?』
『うん。そう。』
『良いっすね!俺も久々にうなぎさんと飲みたいっす!』
『ん?……んー。…橋元も行く?』
『ぅ?!』
『行くっす行くっす!』
と言った具合に、三人で飲むことになった。
外で酒が飲めるならなんでもいい。
橋元は少しの量で陽気に酔っぱらう割りにフラフラになって帰れないという事態にはあまり陥らないので比較的楽な相手だ。
しかし今日はいつもより絡みが妙に多い。
ヤケが入っているようにも見える。
なにかあったのかと尋ねたら、どばっと橋元の目から滝のように涙が流れ出てきた。