欲しがり屋のサーチュイン

その言葉の意味を、

理解するのに美木はしばらく息すら止めていた。

「…っ、………っ!」

それはつまり、

そういうことだ。

「美木さん。」

千晶はす…っと、美木の肩に人差し指を押し当てる。

びくりと美木の体が強張った。

「で、どうされます…?」

こてんと首をかしげ、再度千晶はサラサラ流れる髪を耳にかける。

出来るだけ、妖艶に。

出来るだけ、肉食に見えるように。

「……………っ。」

美木は、のどで言葉が詰まって何も喋れないようだった。

『あの、やっぱり、それはちょっと、』

そんな言葉を期待する。

これほどまでの純情な男性なら、今ので充分だろう。

「沼田さんっ、…その、すみま……、」

千晶は空気をスパッと変えるように、貼り付けたような笑顔を作り、ほがらかな雰囲気を醸し出す。

「いえ、こちらこそ突然すみません。あーあ、振られちゃった。」

千晶は内心、よしっ、とガッツポーズを取った。

ようはこちらが振られた感さえ出せれば良いのだ。

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