欲しがり屋のサーチュイン
千晶は、膝を抱えるようにじっと体を固くして、しばらくしてから気持ちを切り替えるようにふぅー。と大きく息を吐き出す。
それから、痛そうな笑顔で美木を見上げた。
「私達、似てますね。」
「……似てますかね。」
「はい、似てると思います。」
扉を前に、手が震える自分と、今千晶を前に震えていた美木。
どっちも、病気のようなものだと思う。
「ねぇ、美木さん。」
「はい。」
「私、でも、もう、いい加減そろそろ、普通に雨の日でも、ごくごく普通に、扉を開けたくって。」
「…はい。」
「平気に、なりたくて。」
「…はい。」
「だから、……一緒に、リハビリしませんか?」
ただじっとしてても、傷は治らなかった。
お酒を飲んでも、誤魔化してしまって終わりだった。
千晶は近くのボックスからハンカチを取りだし、美木の手に当て、その上から大きな手を握る。
千晶は彼がまた震えださないかと恐る恐るだったが、大丈夫だったようで、美木は千晶の手をハンカチ越しにしっかりと握り返した。