欲しがり屋のサーチュイン

明日はどうせ土曜。

「と、とっ、泊ま…?!」

「あ、はい、大丈夫です。絶対美木さんには手を出さないって誓いますから。あ、なんなら寝てる間、私の腕縛ってもいいですよ?」

「しっ、縛りませんよ!俺そんな趣味ありませんから」

ということで、すったもんだの末、千晶はいつものベッド、美木はソファに長い足を出して眠りについた。







「美木さん、朝はパン派?ご飯派?」

「俺はスープ派です。」

「男性に珍しい選択肢ですね。」

「それもまた偏見ですね。」

「確かに。世の中は偏見だらけですね。つまり良く知らない事ばかり。」

「俺はもっと沼田さんの事が知りたいです!」

「あ、そういうの朝だから無しにしましょう。」

クスクス笑いながら千晶は狭いテーブルに朝食を並べていく。

むぅ、と可愛く頬を膨らませながらも美木は洗面台に消えていった。

トマトとレタスのサラダは真ん中へ。

美木の前には簡易のポタージュ。

自分の前には熱々のベーコンと目玉焼きが乗ったトースト。

「おぉ…。」

美木は席に着きながらも千晶のトーストに視線が釘付けだ。

「…これは…。…いざ目の前にあると、臭覚と視覚の圧倒的な刺激にぼこぼこにやられますね。」

よだれをたらしつつも真剣な顔しちゃってる犬に似てる。などと千晶は思った。

「あ、なんなら出来ますよ。」

「え!本当ですか?」

目をキラキラさせながら美木は顔をあげた。

あ、やっぱり犬だな。もふもふ系の。しっぽの幻が見える。

千晶はカチャっと席を立った。

「美木さん。」

「はい。」

千晶はずいっと手を差し出す。

「握手しましょう。」

「え?はい。」

美木は困惑しながらつられるように右手を出した。

ぐっと握り返しながら、千晶は、うむ、と頷く。

「やっぱり。」

千晶は手を離し、キッチンに向かう。

フライパンにベーコンを並べながら後ろの美木に顔も見ず喋った。

「美木さんが性的な接触だと判断しなければ、異性との接触も平気なんですね。」

じゅぅうとベーコンの良い音がする。

「あ、ほんとだ…。」

美木はスープをふぅふぅしながら目を丸くした。

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