欲しがり屋のサーチュイン
美木との接触は何度だってあったと、千晶は卵を割りながら思い出す。
それこそ仕事場や、初めて飲みに行ったときだって担いだし。
その時は、彼は全く平気そうだった。
チンっ、とパンが焼ける。
「どーぞ。当店のベーコンエッグトーストです。」
「ヤバい、うまそう。」
ベーコンがジュウジュウ言ってる。と、美木はトーストの端をちぎり、プルプルの黄身に突き刺した。
とろりと黄身が流れる。
それをソースのようにちぎったパンに付けて、美木は次々と食べていった。
「私ははじめからかじる派です。」
「俺は端から端まで黄身を付けて食べたい派です。」
美木がクスクス笑う。
「俺の事、知っていってもらって嬉しいです。」
「……さっきからブッ込みますね。」
美木はもぐもぐ口を動かしながらニッコリと防御が高そうな笑顔を作った。
「なんか、昨日のやり取りでタカが外れちゃったみたいです。俺も自分がこんなのになるって初めて知りました。」
「……それは…、世紀の大発見ですね。」
「でしょう?俺と、沼田さんしか知らない事です。」
千晶は呆れたように微笑みながら眉をたらした。