欲しがり屋のサーチュイン
そんな不貞腐れたような年上の男性を見て、千晶はふっと笑ってしまった。
千晶の薄い微笑みに美木は更に不機嫌になる。
「いえ、違うんです。」
千晶は、すくっと席を立ち、食事の準備に向かう。
アイボリーの腰に巻くエプロンを着け、長い髪を素っ気ない黒いゴムで後ろにまとめた。
「なんだか、十代みたいだなぁって。」
ざっざっざっと野菜を切りながら千晶はポロリとそんな事を呟いた。
見た目ではない。性格でもない。こと、恋愛関係の価値観に置いて、だ。
好きだなんだと言いながら、それが性的接触に直結していない。淡い恋を覚え始めた小学生女子みたいな。それでいて時々妙に押しが強い。
まるでそれとこれとは全然別物だとでもいいたげな純粋な瞳。この汚れてない眼にこそ、美木の若さの秘密が隠れて要るのではないかと千晶は真剣に思った。
ああ、もちろん全体的にも年齢不詳だが。
美木はどう捕らえたのかムスムスとしながら、長細い紙袋から白のワインを取り出す。
「ん?なに?美木さん今日飲むんですか?」
「いいえ、手土産です。」