欲しがり屋のサーチュイン
あの日から、晴れが続いている。
なんとなく彼とは雨の日のお付き合いしかしてこなかったので、こんな日に会うのは不思議な感じだ。
「今日行ってもいいですか。」とラインを貰ったのにもちょっとびっくりしていた。
千晶好みの手土産まで付いてきた。
赤より白派ってなんで知っているのだろう。
千晶はちらりと机の上のキラキラ光る瓶を見る。
…まぁ悪い気はしない。
晴れの日には個人的な外食は控えていた千晶は有り合わせの食材で適当に夕食のメニューを決めた。
「あ、俺その間お風呂掃除してきますね。」
「あー、…ん?」
ありがとうございますと思わず流れで言いそうになった千晶だったが、フライパンから靴下を脱ぎにかかっているふわふわ王子に意識を移す。
…えっと。
無言で見つめる千晶に気付き、美木は無邪気にニッコリと笑った。
「今日も泊めてください。」
「……終電にはまだまだ間に合いますよ。」
「洗濯も取り入れますよ?」
あ、なら……。なら?なら良いのか?え?
千晶は顔をすぼめながら軽く混乱し返答に困った。
彼とならめんどくさい間違いは確実に起こらない。起こらないんだけど。
あ、別に間違いが起こっても特に困ることもないんだけど。
いや、やっぱり後が面倒臭いか。会社が。
でも前はなんかもう面倒臭くなって泊めたんだし、…んー、いいのかな?いいのか、まぁ。
「…あー、じゃあ、下着以外よろしくお願いします。」
「ラジャーですっ。」
雑誌のモデルのような100点の笑顔を残し、美木はバスルームに消える。
……。
……んー、まぁいいか。
千晶は物をまとめてどかすように考える事を止め、キャベツを切るのに集中し始めた。