欲しがり屋のサーチュイン
「ウナギー、4ーB行程終わったかー?」
背後から荒瀬先輩のダミ声が飛ぶ。
「このトレイで終わりです。」
「そうか、んじゃ美木借りてもいい?」
千晶の肯定の目配せで、美木は「あっ、はい。」と慌てて席を立った。
“ぬた”から“ぬたうなぎ”を連想し、職場の先輩は面白がって千晶の事をウナギと呼ぶ。
その件については、千晶は学生時代から慣れたもので、特に気にしていなかった。
空席になった隣に、千晶は一抹の寂しさを覚える。
めんどくさいと思っていた世話係も、もう一ヶ月。
美木にもようやく自分の広い机が与えられる事になる。
つまり千晶の隣に並ぶ事はなくなるのだ。
ガシャンと大型のマシーンにトレイの山をセットし、千晶はスイッチを入れた。