甘噛みイサキちゃん。


そんなパブの店長生活だったが、今日もあのお客様がいらしたようだ。


幼い顔立ちで、初めは未成年かと思ったほどだった。


確か来店し始めたのが二年前。驚いて年を聞けば、その日にちょうど二十歳になったのだという。大学の学生証を見せられ、得意げに片方の口角をあげていたのを未だに覚えている。


とても幼い顔立ち。だけども中身はそこらへんの大学生とは明らかに違っているのを俺は知っている。


まるで経験を積んだ大人の女。


周りの客は言う。

「不思議な子だね」

「目をつぶりながら話してたら、スナックのママかと思うよ」

と、言うのだ。

店へ来てはカウンターに座り、気づけば他の客と一緒に飲んでいたり。

おじさま方には酒をおごられ、外国人の方にはおごられる上にそのあとの予定を聞かれ。



そんな彼女は、来た当初から一度だって友人と来たことがなかった。


いつも決まって一人で。いつも決まって土曜日に。いつも決まってカウンターの定位置に。


「こんばんは。ケイさん」


「いらっしゃい、イサキちゃん」


まだ若い、それでも2年で格段に大人へと変わって行くイサキちゃんは、今日も定位置へ。


「ギネス、パイント」


こんなに呑んべいなイサキちゃん。17も年下なイサキちゃん。


「ナッツもください!できればカシューナッツ多めで」

笑う。ボブの髪を耳にかける。




俺はイサキちゃんが好きだったりする。






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