甘噛みイサキちゃん。
「あ、イサキ。イサキ来てますよ、店長」
「知ってる」
パイントのグラスに、ギネスをなみなみとつぐ。知ってるよ。これイサキちゃんのだし。俺が出迎えたんだし。
「あ、ナッツ。今日はナッツ注文されました?カシューナッツ多め?」
「いい。俺がやる」
だって俺が注文受けたんだし。ほらほらサナダくん。お客様のご案内を。
「いらっしゃいませ!.....もー、店長。過保護っていうかなんていうか」
「違うよ!俺が注文受けたからやってんだ!」
「ほーう。そうですかそうですか」
ニヤニヤ顔がうるさいサナダくん。一年前からアルバイトで入ってもらってる大学生。イサキちゃんより一個下のくせに、生意気にも呼び捨てである。
彼はイサキちゃんに一度告白して振られたらしい。それにもかかわらず、今だに諦めがつかないそうで、ことあるごとに接触を接触を!と仕事そっちのけで彼女のもとへ。
ちなみに俺の気持ちには気づいていない。もちろん二人とも。