甘噛みイサキちゃん。

酔っているとき限定です。



「んふっ!ケイさん、日本酒飲みたい」


「......枝豆は」


「欲しいです欲しいです」


この流れである。酔うとさらに濃度の高いお酒を飲んで(しかもアイリッシュパブなのに日本酒)、そして発動するのだ。


「隣いいかな〜。いやー、君パイントいっちゃうなんて凄いね!その上飲むの早いし」


「ふふ。お酒好きなんです」


日本酒をカウンターにおけば、口元だけの"ありがとう"を俺に向け、微笑む。またいつもの流れである。おじさまが隣に。


「おじちゃんがおごってあげるよそれ〜!だからお話しよう!」


「おごるなんて、そんな。それより一人なんでお話してくれる人ができて嬉しいです」


照れたように下方へ向けた視線と、うっすら上がる口角。来たときに耳にかけた髪が、少し落ちて来ている。


それからその客の話し相手へと。俺も他のお客様の相手があるから、ずっとそこにいるわけにはいかない。気になるけど、おれはここの店長なんだから!


あれは素なのである。年の割りに落ち着いた性格からか、同年代には声をかけられないそうだが(サナダくんは別として)、けっこう年上な人、そして自立した女性を好む海外からのお客様にはよくモテる。


モテるけれど、それを店の外までは持ち出さないのをこの2年でよく見て来たから、俺も好意があれど動き出せないのだけれど。


もう来ない、とか言われたらそっちの方が怖いし。



「ええ?!22?!童顔な30かと思ったよ」


「え、えへ」




......30は言い過ぎだろ。





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