ラブ・カクテル
あたしは急いで着替えを済ませ、彼の元へと向かう。


お店の看板の前で煙草を吸っている、彼。


やっぱり、カッコいい。


こんな人から声を掛けられるなんて、一生の分の運を使い切ってしまったかもしれない。


「お待たせしました」


そう言うと、彼はさっきと同じように笑顔をくれた。


「行こっか」


彼の言葉で、あたし達は歩き出した。


「行こっか」って、彼はどこに行くつもりなのだろう。


あたしは彼の名前も知らない。


そんな人に付いて行くあたしって、どうなのだろう。


今までだって、お客様から声を掛けられたことはあった。


でも、こんな風にお客様の誘いに乗ったのは、今回が初めて。

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