1%のキセキ


「晶子さんから忙しいって聞いてたから、わざわざ出向いてもらうのも悪いと思って来てしまったんだけど……、かえって気を遣わせてしまったね。申し訳ない」

「いえ、そんなことありません」

きっと、どちらが出向かった方が俺の都合に良いか、予めうちの母親にそう相談していたのだろう。
そこで西川さん側が気を遣って、自分達が行こうかなんて話を母親に出てしまったもんだから、乗気になってしまった母親に連れてこられたようなもんだろう。


「宗祐君、この度はうちの娘が大変ご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした」

「本当に助けてくれてありがとうございました」

深々と頭を下げる2人と未結。それにならって後から続くように真結ちゃんが頭を下げた。
そんな風にかしこまられてしまい、慌てて母親が声をかける。


「い、いいんですよっ、そんなー。大した怪我でもないみたいですし」

「腰大丈夫なのかい?」

未結のお父さんが顔を少し上げて心配そうに聞いてくる。


「はい、仕事にも何の支障もありません」

「そうか、良かった」

ほっと胸を撫で下ろす西川家の皆さん。
すると佐智子さんから紙袋を渡された。


「こんなもので申し訳ないけど。宗祐君はこれが好きだって未結から聞いてね」

その紙袋のパッケージは見知ったもの。中を覗くとチーズレモンパイだった。


「どうもお気遣いすいません」


「……正直、裕樹君のことは信用しきっていたからまさか娘に暴力をふるっていたなんて気付かなくてな」

「それもそうだけど、未結がそれを良かれとしていたことも問題だわ。今後はこんなことないようにしてもらわないと、もう年も年なんだし」

「でも今そういうの多いみたいだよー、それ位の傷で済んだだけでも良かったよ。そんな人とお姉ちゃんが結婚するなんてやっぱり嫌だもん」

「……ご心配おかけしまして本当にすいません」

肩を落として、家族に謝る未結。
自分が誰かに傷つけられて、自分が良かれとしても、それで傷つくのが自分だけじゃないとやっと分かったようだった。


< 104 / 231 >

この作品をシェア

pagetop