1%のキセキ
今までだったら、どんなに拒絶されても強引に先生のプライベートへ足を踏み入った。
それができたのは、先生のどこかできっと許してもらえるような隙があったから。
だけど、今は無い。
穏やかに私を見つめる目は、一切の有無を言わせない凄みがあった。
だけど、そう易々とうんとは頷けず、なんとかこの関係を少しでも繋ぎとめる術はないか考えた。
そんな頭の中も読まれてしまったのか、しばらくして沈黙する私に部長が口を開いた。
「……君は大事な後輩なんだよ、言うことを聞いておくれ。俺じゃなくても君を幸せにしてくれる男はたくさんいる」
部下とは言わず、あえて後輩と言ったことに私の涙腺が緩む。
私と部長との関係は、最初先輩後輩だった。
この人の背中を見て私は育った。
「私は今まで欲しいものは自分でつかみとってきました。そんな幸せにしてくれる人より、一緒に幸せになりたい人を選びたいんです」
「そうきたか。そうだな、君はそういうタイプだ」
そう言って笑ったのも束の間。
ふと瞳に黒い影が差した。
蔑むような目で私を見つめる。
思わず息を飲んだ。
「でも、君と一緒になれば俺が幸せになれるって?大した自信だな、虫唾が走るよ。そんなに俺が不幸そうに見えるかい?」
「……っ」
温厚な先生が、これ程まで怒気を含んだ声で咎めたことは一度だってなかった。
でも私もここで退く訳にはいかない。