1%のキセキ



『どんな女性と結婚するか分かりませんが、できれば可愛くて料理が上手で優しい子がいいです。えっと、た、高田みたいな凶暴な女は間違っても選ばないでください』


静まる場内、ちらっと名指しされた高田京香を皆が見やる。
昔から気が強くて、クラスを取り仕切っていたような女の子だ。

彼に名指しされても眉ひとつ動かさず、腕を組みながら、まるで虫けらを見るような冷め切った目で彼を見つめていた。

不器用な彼はこの場を上手く誤魔化すこともできず、汗だくだくになりながら、作文に書かれている内容をありのまま話し続ける。


『えー、た、高田は気が強過ぎてきっと結婚できないと思います。そんな可哀想な彼女を、えっと、あ、憐れんだ目で見てやることが今から楽しみです』



その後も続いた高田さんへの爆弾発言。

物静かな彼が子どもの頃、胸に秘めていた思いはあまりにも過激で、ついに高田さんが下を俯き顔を手で覆った。

読み終えた彼がおろおろすしながら歩み寄って行くと、泣いていた彼女はどこへやら。
ニヤつきながらひっしと彼の肩を組んだ。

まるでムシトリソウの如く、泣きまねを餌に彼を待ち構え、寄ってきた彼を捕まえたのだった。

途端に、ひぃいと男のくせに情けない悲鳴をあげる町田君。
首根っこを掴まれた彼はそのまま裏へ連れて行かれてしまった。

そんな、昔もしていたような懐かしい2人のやり取りを苦笑いしながら皆で見守る。


「ねぇ、なんだかんだ、あの二人お似合いな気もするんだけど」

「だよねー、帰ってくる頃には案外仲良くなってるかもよ」

なんて外野が好き勝手言いながら、くすくす笑う。

それからも、タイムカプセルという名のある意味暴露大会は続いた。



「えーと、次はー……っと、お、宗祐ーっ」


そうちゃん?
ちらっと、そうちゃんの方を見る。



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