1%のキセキ




「新しい薬を併用する分、以前の薬の容量も減らされていますから……」


おそらく、
憶測でしかない、この先を私から言えず、先生に助けを求めるようにとらっと先生の顔を見上げた。


「処方した医師は、この新しい薬に切り替えていきたいんだと思います。この新薬だけでコントロールするのは難しいのですが、副作用が少ない薬ですから」


黒瀬先生のその言葉に安心した女性。
やっぱり患者さんにとって、医者の存在は大きいものだ。

私なんかの説明より、先生の大丈夫という一言の方がよっぽど安心できるだろう。

なんてちょっと気落ちしているところに、

「良かった、ちょっとほっとしたわ。あなたの説明も分かりやすかったわ、ありがとうね」


と、そう言ってくれた女性。


直接、人に役に立てたという実感がこんなに嬉しいなんて。

正直、こういう患者さんに直接関わる仕事は苦手だと思っていた。
だから就職先にも薬剤会社を選んだ。

だけど、実際はこんなにやりがいを感じられるなんて……。



「あっいた黒瀬先生!」


今度こそ薬局へ行こうとする間に、またしても先生が捕まった。


「ちょっと、どこほっつき歩いてるんですか。外科部長が『今日は、あいつOPEがないからサボってるんだ!』って言って血眼になって探してますよ?」

「サボってねぇよ、回診しているだけで。今も退院される患者さんに挨拶してきたとこだし」

「でも、早く行ってあげてください。あの人、先生がいないと治療方針決められないんですから」

「はいはい、じゃ1人で薬局戻れるか」

「はい」


頭の後ろをポリポリ掻きながら面倒そうに、医局へ戻る先生。
私はそのまま1人で薬局に戻ることに。


< 176 / 231 >

この作品をシェア

pagetop