1%のキセキ
「新しい薬を併用する分、以前の薬の容量も減らされていますから……」
おそらく、
憶測でしかない、この先を私から言えず、先生に助けを求めるようにとらっと先生の顔を見上げた。
「処方した医師は、この新しい薬に切り替えていきたいんだと思います。この新薬だけでコントロールするのは難しいのですが、副作用が少ない薬ですから」
黒瀬先生のその言葉に安心した女性。
やっぱり患者さんにとって、医者の存在は大きいものだ。
私なんかの説明より、先生の大丈夫という一言の方がよっぽど安心できるだろう。
なんてちょっと気落ちしているところに、
「良かった、ちょっとほっとしたわ。あなたの説明も分かりやすかったわ、ありがとうね」
と、そう言ってくれた女性。
直接、人に役に立てたという実感がこんなに嬉しいなんて。
正直、こういう患者さんに直接関わる仕事は苦手だと思っていた。
だから就職先にも薬剤会社を選んだ。
だけど、実際はこんなにやりがいを感じられるなんて……。
「あっいた黒瀬先生!」
今度こそ薬局へ行こうとする間に、またしても先生が捕まった。
「ちょっと、どこほっつき歩いてるんですか。外科部長が『今日は、あいつOPEがないからサボってるんだ!』って言って血眼になって探してますよ?」
「サボってねぇよ、回診しているだけで。今も退院される患者さんに挨拶してきたとこだし」
「でも、早く行ってあげてください。あの人、先生がいないと治療方針決められないんですから」
「はいはい、じゃ1人で薬局戻れるか」
「はい」
頭の後ろをポリポリ掻きながら面倒そうに、医局へ戻る先生。
私はそのまま1人で薬局に戻ることに。