1%のキセキ
帰り際。
彼の服の袖を掴む。
びっくりしたように私の顔を見下ろした。
「私と付き合ってくれませんか?」
「は……?」
意表を突かれ、まるでキツネにつままれたかのような顔。
まさか私から告白されるなんて思わなかったようだ。
私は表情一つ変えず続けて言う。
「……ダメかな?」
「ダメっていうか……、それ本気で言ってんの?」
「本気だよ」
「いや、あの気持ちは嬉しいけど……」
そこから続く言葉を察して、彼のその言葉を遮って言った。
「知ってるよ、幼馴染がずっと好きだったんだってね」
「まぁ……。てかどこでそれを」
「藤沢さんから聞いた」
いつもだったら、あっさり自分から切る人間関係。だけど今日は違った。
「その幼馴染の代わりでいいから」
「……え?」
「幼馴染のこと忘れられなくて辛いんでしょ?」
……卑怯だろうか。
弱った彼につけこむなんて。
でも、突然見放されてしまうのは、どうしても寂しい。
私もあなたのようにちゃんと恋ができる人間になりたい。
喜び、怒り、悲しみ、当たり前の感情を当たり前に感じれる人間になりたい。