1%のキセキ
「もう、それ脱いでバスローブでも着たら?」
いつまでもベッドの上で中途半端に脱がされたドレスを纏う私に、そうちゃんはバスローブを渡してくれた。
……なんですか、これはボクシングで言うタオル的な意味合いですか?
もう戦意喪失、試合終了みたいな?
さっさとベッドから出ろみたいな?
もう私のお腹のバカっ!
敗者の如く、悔しそうに顔を歪めながら浴室へ向かう。
「そのままシャワーでも浴びてきたら?」
「うん」
促されるまま肩を落としてうんと頷いた。
とほほ、なんと情けない。
シャワーを浴びながら1人反省会。
あそこまで良いムードだったのに……っ。
全部お前のせいだぞ、と憎き脂肪を揉みながらそう愚痴る。
結局私は、風呂上りにワインを飲みながら、ミックスサンドを頬張ることに。
そうちゃんはチーズとスモークサーモンをつまみにしていた。
「私、そうちゃんと一緒にいたら甘やかされてぶくぶくに太りそう」
「じゃ、厳しくいく?」
「え、遠慮しておきます」
改めて、そうちゃんは窓の外を見つめると、目を少し細めながら言った。
「こっちも結構綺麗なもんだな」
「そりゃ、東京と比べたら見劣りするでしょうよ」
さっきから綺麗だとはしゃいでいたが、東京に比べたら何分の一とかいうスケールだろう。
「ねぇ、あっちにいた時のこと教えてよ」
そうちゃんは、さっき私がお酒を飲めるのかも分からなかった。
幼い頃からずっと一緒だったと言っても、中学卒業からつい最近までお互いの知らない長い空白の期間があるのだ。
知らないことが多すぎる。
少しでもその空白の期間を知りたくてそう尋ねた。