1%のキセキ
……これは私の大事な思い出。
他の男の写真をこんなに大切にしているのは、やっぱり彼からしたら面白くないだろうし怒られて当然だ。
本当、彼には申し訳ないと思う。
だけど、
どうしても、捨てることなんてできない。
繋ぎ合わせた写真を眺めると、また涙が溢れてきた。
彼が怒ったのは一時的なものだった。
少しのぎこちなさは多少感じながらも、変わらない日常を送っていた。
そして、週末。
お互いの休日に合わせて、私の実家に来ていた。
私と彼、その前にお母さんと妹の真結がテーブルを挟んで並ぶ。
「いよいよ来月ねー。楽しみだわー」
お茶をくみながら言うお母さん。
「ねぇねぇ、お姉ちゃん何色のドレス着るの?」
「秘密ー」
式用のドレスもお色直し用のドレスももう全部決まってる。
キラキラした目で聞いてくる妹にも、それは教えてあげない。
ふとお母さんが真面目な顔をして彼へ頭を下げた。
「裕樹さん、改めて未結のことよろしくお願いします」
それに対し彼も「はい」と応じて頭を下げた。
本当、あともう少し。
もう少しでこの人と一緒になるんだ。
2人が交わす言葉の重みに改めてそう実感した。
ピンポーン
唐突に、家のチャイムが鳴る。
「はーい」
返事をしながら出て行った母。
ガチャとドアを開けた音がすると、聞こえてきたのはよく聞き覚えのある声。
「ちょっと餃子作り過ぎちゃったのよー、さっちゃんちで良かったら食べてくれない?」
さっちゃんとは、佐智子という、うちのお母さんの愛称。
「あら、いいの?あっこちゃんの餃子おいしいのよねー、嬉しいわ」
やっぱり。
あっこちゃんとは、宗佑のお母さん、晶子さんのあだ名だ。
うちのお母さんとは今でも仲良しで、よく一緒に買い物に行ったり、こうやっておかずを交換したりしてる。