1%のキセキ


準備に取りかかり始めた母親にそう言った。
こうなったら逃げようと計らうも、母親にきっと睨みつけられる。

「何言ってんの、あんたが来てるって言っちゃったんだからダメよ」


そんな時、タイミング悪く家のチャイムが鳴った。

「はーい」

「あっこちゃーん、手伝いに来たよー」

やって来たのは、未結のお母さん、佐智子さんと妹の真結ちゃん。
佐智子さんは全然変わってないが、見ないうちに真結ちゃんは大きくなった。
最後に会った時はまだ中学生位だったろうか。


「きゃー宗佑君っ!相変わらずかっこいいっ」」

そんな真結ちゃんに再会して早々、甲高い声をあげられる。こういうとこは変わってないんだな。


「本当ねー。目の保養になるわー」

「どうもお久しぶりです。真結ちゃんも久しぶり」

「今ねー、ちょうどこいつの彼女から連絡来ててさ誘ったの。で、今迎えに行かせようとしてて」

そう言う母さんに、真結ちゃんが分りやすい程ショックを受ける。

「彼女ーっ!?うわー……ショック」

「お母さんもちょっとショック」

がくっとうなだれる2人の横を苦笑いしながら通り過ぎ、車のキーを持って外へ出た。



……あぁ、これで参加せざるを得なくなってしまった。


栞から住んでいるアパートを教えてもらって迎えに行く。
しかし来るとは思わなかった。

大勢の見知らぬ他人と食事なんて見るからに苦手そうなのに。
母親の押しに断れなかったのか。

本当に、今回は巻き込んでしまって申し訳ない。


「付き合わせてごめん。例の幼馴染がさ、今実家に婚約者と帰って来ててさ、そしたら一緒に皆でご飯食べようって話になっちゃって」

会って開口一番謝った。
そして、車内で家に着くまでの間、ことの顛末を話す。


「ううん、滅多に大人数でご飯食べることないから楽しみ」

すると意外にも栞はそう言った。

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