1%のキセキ
家に着くと、そこにはすでに未結とその婚約者らしき男がうちのリビングのテーブルに座っていた。
……そうか、この人が未結が選んだ結婚相手なのか。
いくつか年上であろう、物腰が柔らかそうな人だ。
もう少し嫉妬するかと思ったが、思いのほか気持ちは落ち着いている。
むしろ優しそうな彼を見て少しほっとした位だ。
未結がこちらに気付くと、すかさず声をかけてきた。
「宗佑君久しぶりっ」
そう言ってにこっと笑う。
仕方がないことだが、宗佑君、と呼ばれ少し違和感を感じた。
この前病院で会った時は、2人だけだったから、そうちゃんと呼んだだけ。
宗佑君、という呼び方の方が普通なのだ。
だけど少し寂しい。
「それにしれも、さすが宗佑君の彼女だね、可愛い子じゃん!」
そう言って隣にいる栞を褒める。
栞は俺の2つ下だから、未結からも年下にあたる。
だけど未結が童顔なだけに、少し栞の方が大人びて見える。
性格が落ち着いているっていうのもあると思うけど。
「本当、お人形さんみたい。宗佑君と並んだら芸能人のカップルみたいだよ」
今まで傍観していた真結ちゃんが、栞を見つめながら感嘆の声をあげる。
「あ、あの彼女じゃないんです、宗佑さんとはお友達として仲良くさせてもらっていて……」
遠慮がちに苦笑しながら、そう答える栞。
それに対し、真結ちゃんがにやにや笑いながら茶化す。
「えー怪しーっ」
そんな人懐っこい真結ちゃんに、横から料理を運んできた佐智子さんの鉄槌が飛んできた。
「こら初対面なのに、そんな口の聞き方失礼でしょっ」
いたーい、と言いながら頭を抑える彼女に、自然と皆から笑い声が漏れて場が和む。