1%のキセキ
「あの今日は私まで誘って頂いて本当にありがとうございます、望月栞といいます。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる栞に、キッチンで佐智子さんがうちの母親を肘で突く様子が見えた。
「あっらー、いい子じゃないさっちゃん。宗佑君、いい子捕まえたわねー」
「本当、宗佑にはもったいないわ」
そんな声がキッチンから漏れる。
リビングにいる俺達には聞こえないように話しているつもりだがダダ漏れだ。
「こちらこそ、はじめまして西川未結です」
そう言って、栞に手を差し出し握手する2人。
笑顔で顔を見合わせる2人に、未結の婚約者がそわそわと声をかけるタイミングを見計っているようだった。
そんな様子にもなんだか安心してしまう。
未結が学生時代好きになったり、付き合ってきた奴らは、こんなに思慮深いような人じゃなかった。
もちろん年齢もあるが、それにしたって空気の読めないお調子者が多かったから。
またそんな輩を選んだんじゃないのかと心配していたのだ。
本当に良かった、良識ありそうな人で。
「未結、俺も紹介してくれるかな?」
やっと躊躇いがちに声をかけることができた婚約者。
それに気付いた未結が顔の前で手を合わせながら謝って、紹介する。
「ごめん、ごめん、こちら婚約者の杉山裕樹さん」
そう言う未結に、俺はその婚約者に対し会釈した。
「はじめまして、未結の幼馴染の宗佑です」
それに対し婚約者の方も笑顔で軽く頭を下げた。
「こちらこそ、はじめまして」
そして、彼の方から手を差し出され、条件反射にその手を握った。
交錯する手。
しかし思いのほか冷たい彼の手に、思わずびくっとする。