1%のキセキ
告白
<side 栞>
第一印象は柔らかく笑う人だと思った。
宗佑君が長年片思いしていた相手、西川未結という人は。
そんな笑顔を見せられ、私はちゃんと自然に笑えているか気にしてしまう。
私が欲しがっても手に入れられないものを全て持っているように見えた。
そんな僻んだって、また自分の性格の悪さを実感して気分が悪くなるだけなのに。
食事会の帰りに寄ったコンビニで、男性店員にお釣りを渡され、その手が少し触れてびくっと過敏に反応してしまった。
不思議そうに見られて、すいませんと言って足早にコンビニを出る。
私は男性恐怖症だ。
少し触られるだけでも、近くに寄られるだけでも異常に警戒してしまう。
……その発端となった原因は、全てあの安生という内科医にあった。
ちょうど今から1年位前になるだろうか。
内科の医局前で安生先生待っていた。
その日はちょうど病院の休診日で、人もまばらで医局にも彼しかいなかった。
この日ならゆっくり話を聞けると言われ、わざわざ休日出勤してきたのだ。
それまで彼が私にさり気なく触ってくることがあった。
わざわざ休日に呼び出した真意もなんとなく分かっている。
人がいないこの日を狙って私に何かしようとしていることも薄々気付いていた。
それでも私は、断ることなんてできなかった。
所詮、私達は医者の前では何を言われても、Yesしかない。
その日私はあえてパンツスーツを選んだ。
そして、予想に反せず奴は医局の部屋の鍵を閉めると私に近づいてきた。