1%のキセキ
<side 皐月>
もう、廊下で堂々とあからさまにモメるなっての。
そんな2人の間に通り過ぎるからには仲介しない訳にはいかなかった。
どんだけ深刻な話してたのか、いつも難しい顔をしている栞ちゃんが更に眉間の皺を濃くさせて黒瀬を睨みつけていた。何事かと思って話に割りこんだら、逃げるように栞ちゃんはどっか行っちゃうし。
大方こいつに何か言われたんだろうけど。
「……何ちょっかい出してんですか?」
「何敬語使ってんだよ、気持ち悪いな。一応、同い年だろ」
「ま、こんなんでも一応先輩にあたるんで」
「こんなんでもって、なんだそれ」
一拍間を置いて、率直に質問した。
「……あの子のこと気に入ったの?」
「別に?面白いからちょっかい出しただけ」
「だからってあの子に手出すのは止めてよね。今、宗佑といい感じなんだから」
彼女の恋を応援したい私は、そう窘める。
すると、奴は信じられないとでも言うように、私を小馬鹿にするように笑った。
「え?お前それマジで言ってんの?」
「は?何がおかしいのよ」
「あの2人が上手くいく訳ないだろ」
「何でそんなことあんたに分かんのよ」
まだ始まってもいないのに、そう断言する奴にむかっ腹がたって思わず喧嘩口調になってしまう。
少なくともこいつなんかよりは、私の方があの2人のことをずっと知っている。
それなのに、2人のことをよくも知らないこいつが、どうしてそんなに自信満々にそう言い切れるのだろうか。
言い合っている中、その仲裁に入るかのように私のピッチが鳴った。
「はい、藤沢ですけど……」
『救急で一人、今からSAH疑いで来るんだけど頼めるか?』
電話の相手は高城先生だった。
思わず声に変な力が入ってしまう。
「はい……っ」
「何、高城先生?」
察しのいい奴が、面白がるように聞いてくる。
私はうんざりしながら、ぶっきらぼうに答えた。
「……だったら、何?」
「見れば分かるよ、嬉しそうな顔しちゃって。急患来るんでしょ、さっさと行ったら?」
「あのっ一言だけ言わせて。あんたのね、その全てお見通しって顔すごくむかつくっ!」
「でも間違ってないだろ?」