1%のキセキ
「えっ?」
思わず聞き返してしまう。
「しかもさっき受付で聞いたんですけど、彼女来院する前に、わざわざ今夜の当直を受付に電話で聞いてきたそうで」
「……それって、知り合いが働いてる病院に行きづらかったってことよね?」
しかし、ここらで脳外の夜間救急を受け付けているのはうち位しかいない。
もし宗佑が当直だったらわざわざ他の市にまで行こうとしてたってこと……?
そうまでして、知り合いに知られたくないことって……。
やっぱりあの傷は転んでできたものじゃない。
どうやら、やましい事情があるようだ。
「彼が婚約者だそうです」
看護師からそう告げられ、処置室の前のソファーに座り顔面を両手で覆う男に声をかけた。
「脳外科の藤沢です。只今検査中でして創部の処置をしてから、終わり次第説明させて頂きますので、こちらで少々お待ち下さい」
「はい、よろしくお願いします」
立ち上がり礼をする彼の目の淵は若干赤くなっていた。
見た感じ、好青年って感じだけど……。
処置室に入ると、こっそり看護師に耳打ちする。
「とりあえず入院させるから、他に痣がないか彼女の体見といて」
「はい」