1%のキセキ
歪んだ関係
<side 未結>
いやだ、そうちゃんには知られたくない!
心の中でそう叫んだ。
予想だにしなかった事態に、取り乱した私を看護師さんが捕まえた。
しばらく抵抗して泣いていたが、もうどうしようもいと放心し始めた私の背中を、看護師さんがさすってくれる。
私はその手に縋るように看護師さんに切々と訴えた。
「違うんです、DVなんかじゃないんです……っ、ちょっと口論になって、彼が私の肩を少し押したら後ろに倒れちゃって、それで運悪くテーブルの角にぶつかっちゃって……っ」
涙が止まらない。
しゃくりあげながらも、私は訴え続けた。
「彼は悪くないんです……っ」
そう、彼は悪くない、悪くないと繰り返し訴えた。
……悪いのは私なんだ、彼を傷つけてしまったから。
あのビリビリになった写真を私はテープで繋ぎ合わせ、隠し持っていた。
それを見つけた彼が逆上して私の肩を押したのだ。そしたら倒れた先に運悪くテーブルの角があったから……。
やっぱり捨てなくちゃいけなかった。
あれは持ってるべきじゃなかった。
結果、彼を傷つけることになってしまった。
『本当はあいつのこと好きなんだろう?』
『好きじゃないっ、それは思い出に……っ』
それは、数時間前の出来事。
『どうしても取っておきたかったの……っ』
宗佑は私の初恋の人。
学生時代、誰と付き合っても、心のどこかではいつも宗佑を想っていた。
そんな自分が許せなくて、悲しくて、自暴自棄になった頃出会ったのがあなただった。
あなたと知り合ってまた新たな恋をして、宗佑への未練も薄らいでいったんだよ。
『私が本当に好きなのは裕樹だけだよ、信じてよ』
こんな風に訴えるのは初めてじゃない。
何度彼にそんな思いの丈をぶつけてきただろうか。
『じゃあ信じさせてくれよっ。結婚前に不安にさせんな……っ』
彼はそう言って涙を流しながら私を突き飛ばしたのだ。
マリッジブルーは私だけじゃなかった。
むしろもっと深刻だったのは彼の方だった。
ぶつけたところをさすると、赤い液体が手についた。
……あぁ、血だ。
そんなに痛くなかったけど、傷ついたみたいだ。
ぼんやりそんなことを考えていた私に、心配した彼は必死に私の名前を呼んでいた。