1%のキセキ
ぼそっと漏らした男子の声、すかさず反応したのは担任に先生だった。
「あなたねぇっ、もし今のが目に入っていたら大変なことなのよ!あなた責任とれるの?!」
そんな先生の言葉も受け付けず、おどけながら聞き返す男子。
「責任ってなんですかー?難しい言葉わかりませーん」
「ちょっとあんたねぇ!」
「いい加減にしなさいよっ!」
口々に気の強い女子グループが反論し、先生がヒステリックな声を上げた時。
誰よりも静かに、だけど誰よりも強い怒りを露にしたのはそうちゃんだった。
つかつかと男子へ歩み寄って睨みつけた。今にも殴りかかりそうなそうちゃんに先生も心配して声をかける。
「そ、宗佑君、だめよ!」
小さい頃から一緒にいたけれど、こんなに怖い位に怒って攻撃的なそうちゃんは初めてだった。
「な、なんだよ」
「……責任っていうのは、もし今のが目に入って未結の目が見えなくなったら、お前の目と交換してくれるのかってことだよ」
そう言ってぐいっと男子の襟口を掴む。
「な、なんだよ。いっつも一人だけ大人ぶりやがって。そんなに大好きな幼馴染が傷つけられたのが許せないのか」
そこでそうちゃんが殴ったことをきっかけに、2人は掴み合いの喧嘩に発展していった。
「未結に謝れっ」
怒鳴るそうちゃんに、相手も一歩も引かない。
結局、担任に女の先生1人ではどうすることもできず、もう1人先生を呼んで2人を引っぺがしたのを覚えている。
別々に保健室で手当てすることになった2人。そうちゃんの迎えには私が行った。もうその頃には下校の時間になっていて、そうちゃんのランドセルと荷物を持ちながら。
保健室へ入ると、そこにはそうちゃんの姿しかなかった。
「あれ?先生は?」
「……会議だって」
ぼそっと言うそうちゃん。
頬の引っ掻き傷がなんとも痛々しい。
「あたしのせいでごめんね、大丈夫?痛いよね?」
「別に未結のせいじゃないだろ」