1%のキセキ



<side 宗祐>



藤沢から連絡をもらって、急いで外来へ駆けつけた。

『今あなたの幼馴染が外来に来てるんだけど』

『未結が?』

『どうやら彼から暴力をふるわれているみたいなの』

『……え?』

その電話の内容に、思わず半信半疑に聞き返してしまう。
あの人の良さそうな人が、そんなことするようには見えなかったから。

しかし藤沢だってそんな悪い冗談を言うような人間じゃない。

だけど、もしあの人が本当に未結を殴って傷つけたなら……、俺はどうすれば良いんだろうか。

あいつと別れろ、と未結を説得するか。それとも、二人に何があったのか聞いてみるか。

それとも……、

そうやって、冷静に努めようと色々考えたがやっぱり無理だった。

考えれば考える程、ふつふつと怒りが込み上げてくる。
婚約者を目の前にしたらうっかり殴りかかってしまいそうな位。

そして足早に向かった処置室、CT結果を見て愕然とする。
更には未結の頭には数箇所、皮下出血が見られた。

これは、DVだと疑われても仕方が無い。泣いている未結に構わず、処置室を出て彼の元へ。

本当だったら殴りかかって胸ぐら掴んで真相を問い質したいところ。
その衝動を精一杯の理性でなんとかこらえる。



「……杉山さん、少し中でお話伺えますか?」

努めて冷静に待合室に腰かけた彼に声をかけた。

「……はい」

パソコンの前に座らせ、藤沢と外来看護師に目配せし未結を引き連れて席を外してもらう。
その時、不安そうに未結にじっと見つめられたが気づかないフリをした。


「……今回の傷は転んでできたんですか?他に頭部に痣が何ヶ所かあるんですが、心当たりはありますか?」

「はい、滑って転んで、たまたま背後にあったテーブルの角に頭をぶつけました」

「家の中で滑って転んだんですか?」

「はい……。すいません本当は、俺が彼女と口論になってたまらず突き飛ばしてしまったんです」

「……それだけじゃないですよね?何度か彼女を殴っているのでは?」

「……はい」

目を下の方に向け、表情一つ変えずにそう答える婚約者。

「どうして?」

俺が更に追求すると、少し眉間に皺を寄せたまま押し黙ってしまった。
たまらず俺の口調も荒くなる。

「答えろよ」

すると封を切ったように、目に涙を浮かべながら訴え始めた。

「俺だって殴りたくて殴ってるんじゃない……っ、でもそうでもしないと不安になるんだよっ」

「だからって、好きな人を殴るのか?傷ついた姿を見て安心するのか?」

自分だって苦しんでいるんだ、そう言っているようだが俺には到底目の前の男を可哀想だとは思えない。




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