1%のキセキ
「……おかしいだろ」
ふと出た言葉。
……だけど俺だってこいつを一方的に責められる訳じゃない。
俺も、過去に未結を傷つけたことがある。
そして、それが俺達を疎遠にさせた決定的なものとなったのだ。
その時思った、好きだからといって何をしても許される訳じゃないことを。
所詮、想いというのは口にしなくては伝わらないということを。
そんな俺に、こいつへ説教垂れる筋合いなんてない。
ましてや家族でも兄弟でも、元彼でも何でもないのだし。
ただ近所に住む幼馴染だ。
だけど小さい頃からこいつと一緒にいたんだ。
あの天真爛漫に笑う彼女が、これからもこいつに傷つけられていくなんて耐えられない。
「別れてくれないか」
単刀直入に彼の目を見据えてそう言った。
しばらくの沈黙の後、奴は静かに口を開いた。
「……それはできない」
「ふざけるなよ、彼女をここまで傷つけておいて」
「俺だって、今のままではいけないと思ってる。……とりあえず、彼女を実家に帰して少し距離を置くよ」
……実家に帰す。
家族にこんな痛々しい姿を見せて、なんと言われるか分かってるのだろうか。
結婚だってなかったことになるかもしれない。
「……もし、破談しても家族を責めるなよ」
「覚悟の上だ」
一晩入院し、翌日検査で何もなかった未結は退院していった。
その隣には奴の姿が、今は彼の言葉を信用するしかない。
……幼馴染の俺が介入できるのは所詮ここまでだ。