1%のキセキ
「風呂入るか?」
「……はい、是非お借りしたいです。」
顔を少し赤くして遠慮がちに言う。
バスタオルと着替えの部屋着を渡して、風呂場に案内すると、唐突に目を見開いて聞いてきた。
「って、髪洗って大丈夫なの?」
「もう大丈夫だって」
「嘘だ、しみるんじゃ……っ」
「じゃ洗うの止めとけば?」
「やだよー」
眉を八の字にさせて、泣き言を言う。
昔と変わらないな。横目で見ながらつい口元が緩みそうになる。
髪をなかなか洗えず、時間がかかるかと思ったら思いの外すぐに上がってきた。
「はーさっぱりっ。全然大丈夫だった」
そう言ってにっこり笑う。さっきとは打って変わって余裕綽々にドライヤーで激しく髪を乾かす未結。
大胆な乾かし方に思わず口を出す。
「お前だからって調子に乗って、そんなわしゃわしゃすんなって」
「大丈夫、大丈夫……っていったーいっ」
言った矢先、ステープラーの針に爪が引っかかった様子。
涙目でこちらを見つめる。
「ほら、言わんこっちゃない。貸して、乾かしてやるから」
「……あぁ、痛かった。そうちゃん、傷跡にはくれぐれも細心の注意をはらってね」
「分かってるって」
未だに、あぁ痛かったよーとぐずる未結。
そんな姿に微笑ましく思いながらも、つい嫉妬してしまう。
昔からこんなに人一倍痛がりなくせに、あいつに殴られるのは耐えられるのか、と。
未結の髪を乾かし終え、自分も風呂に入った後ソファに座る。
もう一つのソファに座って、あぐらをかきながらバラエティ番組を見て笑う未結。そのけらけらと笑う姿の方が面白くて、バラエティ番組の内容は然程面白くないにも関わらずついつられてしまう。
「なんか、お前あんま変わってないな」
「え、そうかな?」
ちょっと嬉しそうに、近くにあった姿見を見て照れる奴にすかさず付け足した。
「いや見た目じゃなくて中身」
「はぁ、何それ」