1%のキセキ
少し頬を膨らませてむすっとする奴。
思わず声に出して笑ってしまう。
相変わらず期待を裏切らない反応をしてくれるから、からかわずにはいられない。
……なんで、あいつなんだ。
こんな砕けた雰囲気の今だったら聞きやすい。そう、ずっと抱いていた疑問をぶつけた。
「なぁ、あいつのどこがいいの?別れた方がいいって、ああいうのは治るもんじゃないだろ」
「だけど普段はすごく優しいし、私のことすごく愛してくれてるんだもん」
あ、愛……?
さも当たり前のように、こっぱずかしげもなく言い切った未結に思わず閉口してしまう。
……あぁ、思い出せば、確かに昔から大げさに愛だの恋だの言っていた気がする。確か少女漫画の影響で、『女は愛されることが何よりの幸せだ』と豪語していた。
しかし、それが本当にお前の幸せなのか。愛されてたら殴られてもいいのか。
「なぁ、未結。本当にお前のことが大事だったら殴ったりできないと思うけど」
「……っ」
「お前のことは好きなのかもしれないけど、それよりも殴って相手を傷つけてまで自分の不安解消を優先させてるんだからまともじゃないだろ」
「分かってるよ……っ」
「分かってねぇから言ってんだよ。少なくともあいつは、お前よりも自分の気持ちを優先させたい独善的な男だ」
「……それでも、初めて男の人に愛されてるって実感できたんだもん。そう簡単に離れられないよ」
初めて……?
なんで初めてだと何の迷いもなく言い切れるんだ。
今お前の目の前にいる男はずっと、お前だけに今の今まで片思いして来たんだぞ。
DV野郎がどんなにお前を想っていようが、俺だってそれ以上にお前を想ってきた。
あぁ、ここで言ってしまえたらどんなに楽なんだろうか。
愛してるとはさすがに言えない。
けど、ずっと小さい頃から未結だけを想っていたことを。
……でも、言ったところで前科者の俺の言葉なんて信用されないか。