1%のキセキ
しかし、何を言っても奴に洗脳されているかのように頑なな未結。
「本当どうしようもねぇな。手術するはめになっても知らねぇよ?そしたらもう結婚式どころじゃないだろ」
「べ、別にいいもん。結婚式だって延期したらいい」
終わりの見えない口論。
段々頑固な未結にイライラしてきて、思わずソファへ押し倒した。
「きゃ……っ!」
「……なぁ、なんであいつしか見えてねぇの?あんな独りよがりな男のどこがいいんだよ?」
突然の俺の行動にびっくりしたのか、大きく目を見開いて驚く未結。
そしてしばらく間を置いて、未結は叫ぶように言った。
「……っ、独りよがりなのはそうちゃんの方じゃないっ」
うっすら目に涙を溜めながら睨みつけてくる。
「は?」
「相手に気持ちがなくてもキスでも何でもできるくせに……っ」
何が何でも涙を流すまいと必死に耐える未結。俺はすぐにあの時のことを言われているのだと分かり、何も言えなくなってしまった。
「…………」
不意に眼下の未結から目を反らすと、それを許すまいと追撃してくる。
「いいよ、好きなようにしたら?あの時みたいに」
まるで挑発するかのように、シャツを脱ごうとする。
体を張ってまで独善的なのはお前の方だと証明したいらしい。
「やめろ……っ」
止めようとその手を掴むと、逆に掴み返され胸元に持っていこうとする。
「なんで、そうちゃん誰とてもできるじゃん」
「やめろって」
「そう言って、昔、私にしたくせに」
奴の挑発から逃げるように、その手を振り払った。
そして寝室へ向かうと、私服に着替えコートを手にする。
その姿を見て心配そうに寄ってきた未結。
「そ、そうちゃん……?どこ行くの?」
それには返事をせず、未結に合鍵を渡す。
「……朝一度、家寄るけど顔合わせずらかったら、先に出てていいから。そしたら鍵はポストん中入れといて」
「ま、待って、そうちゃんちなのにそうちゃんが出て行くことないっ」
「藤沢には言っとく。あいつ世話好きで、まず断らないだろうから安心していい。カルテから番号見て連絡するよう言っとくから」
「そうちゃん、好き勝手言ってごめん、ごめんね。あたしが出て行くから……っ」
慌てる未結の目からついに涙がこぼれた。縋るように俺の腕を掴んで離そうとしない。
家主を怒らせ、その上追い出してしまうことに良心が痛むのだろう。