1%のキセキ
波紋
「え、それで出てきたの!?だっさ!」
「…………」
……黒瀬先輩の家に来るんじゃなかった。俺の家から一番近くて、まだ起きてそうだからという安直な理由で決めるもんじゃないと、その時、俺は激しく後悔していた。
「ひくんだけど、え?ちょっと帰ってくんないかな。なんかその情けなさがうつりそうで怖い」
酒のツマミに面白おかしく聞き出して笑う先輩。
「そこは何が何でも口説いてヤるパターンでしょ?」
「……下劣な先輩と一緒にしないで下さい」
「よし、しょうがない飲みに行くか!先輩が可愛い後輩に奢ってやろう」
「冗談じゃないっすよ。俺朝一でOPE入ってるんすから、しかも高城先生と」
「あぁ、あのキレたらおっかない先生だろ?なんのOPEよ?」
「慢硬ですけど」
「じゃいいだろ。心配すんな俺も朝からOPE入ってるから。しかも開腹」
「だめですよ、何考えてんですか」
「大丈夫、俺失敗しないから」
「……何ドラマのセリフぱくってんすか」
ちょうど酔いが回って調子の良い先輩にうんざりしながら、どうしたらもう早く寝かせてもらえるか考えていた。
「で、何したの彼女に?」
……あぁ、やっぱりそこに食いついて来るよな。
話し始めたら時間かかるし、それに今更自分の傷口抉るような真似はしたくないし。
でも話さないことには、先輩のことだから寝かせてくれないんだろうな……。
しょうがない、と俺は諦めて説明し始めた。